ふるさと納税を検索していて、どびっくり

岐阜県山県市の市議さんが運営しているブログに、山県市では今までのふるさと納税の収支がマイナス540万円だという記事がありました。

◆一般質問通告/ふるさと納税の現状と今後/現状は外から300万円、外へ840万円=マイナス540万円 - てらまち・ねっと

寄付の額は市外からが約300万円、これに対して、市民が市外にした寄付が約840万円、つまりマイナス540万円。件数では、市外からが約120人、これに対して、市民が市外にした寄付が約220件、つまりマイナスで約100件。
 単純な比較でいうなら、「ふるさと納税」の姿勢の結果としての「税金の損害」とも映る。


東京都の自治体では、ふるさと納税によって億の単位の税収が減ってしまったという話は新聞で読みましたが、地方の自治体でもそんな状態だとは、想像していませんでした。


常総市でどうなっているのかを検索してみたのですが、受け入れの内容はウェブに載せていますが、逆に常総市民が他の自治体に寄付した内容については(当然ながら)載せていないようです。


そこで市議会の議事録を検索してみたところ、2年前に下記のようなやりとりがありました。

2013.06.10:常総市:平成25年第3回定例会(第2号) 本文
293 
◯企画部長(岩瀬勝彦君) 金子議員の2番目の御質問のふるさと納税と3番目の御質問の当市のペーパーレス化の取り組みにつきまして順次お答えいたします。
(略)
当市におけるふるさと納税受け付け状況でございますが、平成21年度及び22年度には寄附はございませんでした。23年度は4件で金額は総額59万円でございます。24年度は1件で6万1,050円の寄附がございました。
また、常総市民が他の自治体へふるさと納税を行った状況でございますが、21年度は5件で総額1億19万円、22年度は4件で総額10万円、23年度は6件で総額13万円、24年度は200件で総額1,170万1,937円となっております。

金額を合計すると、流入65万円、流出1億1千万円ほどで、大赤字です。
ただ、ふるさと納税による個人へのお金の戻りは、その年の納税額(所得税、住民税)から控除するので、自治体から見て、まるまる損しているというわけではありません。


とはいえ、

301 
◯財政課長(荒木悟志君) それではお答えいたします。
 21年度、お一人の方が1億円県北の町に寄附されたということになっております。それに対する税については数百万円当市の税が減ったという事実がございます。
 以上です

やっぱり赤字です。
平成25年度以降の寄付の受け入れ額は合計150万円位なので、通算しても赤字と思われます。




ふるさと納税というのは、寄付金から2千円を引いた額を、納税額から減らすことができる制度ですので、納税額の多い人(所得の多い人)のほうが有利に使えるし、返礼品で実質的にブラスにすることもできるようです。
所得が低い人や、扶養家族が多いなどで税金をあまり納めていない人は、そもそも使えません。(使えるけど戻るお金が無いので金銭的なメリットは無い)


ふるさと納税で個人が「お得」している金額以上に国や自治体の収入は減るわけで、本来なら一般の住民(国民)が受けとる税の恩恵を、一部の人たちが受け取っているわけです。
所得格差を拡大する平成の悪税制としか思えません。
また、自治体の間で税金を奪い合う客引きをしているわけです。はしたない。
テレビや雑誌なんかだと、喜々として紹介してますが、あれは、なんなんだろう。見るたびにゲッソリします。


市議会の議事録でふるさと納税について検索すると、魅力のあるお礼の品を考えて寄付金を増やすという方向でしか取り上げていないようです(議員も市長も職員も)。
地方を大切にしたいのであれば、地方自治体は共同して、ふるさと納税を廃止するよう、国に申し入れをした方がいいんじゃないでしょうかねぇ。
せめて返礼品の金額は制限してほしいものです。



朝日新聞デジタル:客引き防止訴えパレード 東京・歌舞伎町、ホストらも - 東京 - 地域


数ヶ月前の新聞記事(茨城面)

マンガでスッキリわかるふるさと納税!ボーナスで寄附して特産品をガッポリもらえ|ふるさと納税おすすめ情報局|ザイ・オンライン


長崎県平戸市に400年ぶりのバブル景気が到来?!ふるさと納税調達額全国1位の平戸市が「ふるさと納税」を通して狙っているものとは?|株ニュースの新解釈|ザイ・オンライン

ふるさと納税特需を特需で終わらせるとバラマキと同じ

 今後のふるさと納税の展望について、平戸市の担当者は「金額競争のフェーズは終わったと考えるべきだ。平戸市の生産者や事業者をかき集めたとしても、返礼品の生産量には限りがあるため青天井に金額を追うことはできない。それよりも、このふるさと納税をきっかけとして、地元の生産者、事業者を全国的に通用する息の長い力強い事業体にすることが最も重要であり、それが目標である」とコメントしていた


追記

東京新聞:ふるさと納税で明暗 県内自治体 5億円失う:神奈川(TOKYO Web)
寄付を通じて自治体を応援する「ふるさと納税制度」で、昨年一年間に県内市町村から推計で約五億円が他の自治体に流出していたことが、県のまとめで分かった。特に横浜市は流出が著しい。返礼品といわれる景品を目当てにした寄付が全国的に加速する中、県内でも影響が広がっている。 (原昌志)

追記(平成28年7月)
高額所得者(高額納税者)は、ふるさと納税を使うと、たった2000円で、新車を入手できたそうです。




追記 2016/12/02
てらまちネットさんが、取り上げていらっしゃったので追記しつした。
◆ふるさと納税 赤字 返礼品競争が過熱/高所得者ほど有利な問題点も/企業版はアベノミクスか メリットと注意点 - てらまち・ねっと
追記 2017/02/13
◆ふるさと納税/自治体間格差最大70億円 勝ち頭、負け頭、過疎自治体も赤字に(読売)/「高所得ほど多くの寄付と返礼品」(NHK) - てらまち・ねっと

追記 2017/03
平成29年2月定例会議 3月3日 本会議 一般質問
中村 安雄 議員が常総市ふるさと納税の収入額について質問されていましたので、件数と納税額をメモしました。(答弁では返礼の割合についても話されていましたが省略しています。今は40% ほどにもなっているそうです)

件数 納税額
23年 4件 59万円
24年 1件 6万円
25年 3件 10万円
26年 16件 129万円
27年 9件 14万円
27年 4091件 1億2320万円 (返礼品無し)
28年 102件 504万円 (返礼品無し)
28年 424件 1739万円 (返礼品再開後)







金持ち優遇の政策としては、自治体が発行するプレミアム商品券というのもありますよね。
今日のテレビを見ていたら、30万円分(プレミア相当分は6万円)を買った人とか出てきましたが、低所得世帯では、そんな現金は用意できないし、地元の商店の日用品(贅沢品以外)で36万円も使い切れないでしょう。


常総市でも9月にプレミアム商品券(プレミア率30%)を発行するようです。
一世帯ごとに購入引き換え券を送るシステムだそうです。プレミアム商品券としては十分に配慮をした結果なのでしょう。(1万円ではなく5千円単位にして欲しいですが)
個人的には、現金をバラまくのが最善だと思いますが、バラマキは世間の評判が悪いので自治体としてはできないでしょうね。


茨城県議会議員 井手よしひろ 公式ホームページ : プレミアム付き商品券、茨城県の全市町村で発行

茨城県議会議員 井手よしひろ 公式ホームページ : 県内全市町村で”プレミアム付き商品券”、35自治体がプレミアム率20%

県南でさまざまプレミアム商品券 購入の方法や対象に違い 常陽新聞 2015年06月11日12時00分


見よ、これが政治家が「票を金で買う」実態だッ!!

プレミアム商品券は誰からの贈り物?: 東京都議会議員 両角みのるが行く





消費税で議論されている軽減税率なんかも、決して、低所得者対策にはならないと思うよ。
対象としてお米が良く持ち出されるけれど、5キロで1500円のブレンド米と、5キロ3000円の銘柄米を買う家庭なら、高いお米を買う家庭が多く税を負担するのは当然でしょう。
知的財産だから、新聞や書籍を軽減税率に含めるという議論があるようですけど、低所得者は、そもそも新聞や本を買えない(買わない)わけで、意味ないでしょ。 データは無いけど収入と本の購入額には比例関係がありそうですから、金持ち遭遇になってしまう。
人間に大切なものは軽減税率にするとしていたら、遊園地とか映画とか交通機関なども軽減税率の対象にすべきとなってしまいませんかね。世の中を差別的に切ることになってしまう。
お米や医療など単に生存するために必要なものを軽減税率とするなら理解できるけど、より良く生きるために必要なものにまで軽減税率とするのは無理があると思います。
低所得者対策が必要なのであれば、負の所得税(給付付き税額控除)で対応すべきですよ。