(メモ)自衛権の行使に制限が増えたんじゃないの?

集団的自衛権に関する閣議決定が行われました。
閣議決定に抗議する人達に対して、保守系(右翼系?)の人から「中国や北朝鮮からの攻撃にどう対処するのか」という反論があるみたいですね。
ま、これは個別的自衛権を知らないだけなので捨て置けば良いのですが、全く逆に、今回の閣議決定によって防衛(戦争)がしづらくなったという見解もあるようなので、メモしておきます。(記録として書くものであって、特別に何かを主張するつもりは有りません)


3要件の内容はこのようなもの。

集団的自衛権・閣議決定、雑感: 極東ブログ
ビフォー:自衛権発動の要件
1. わが国に対する急迫不正の侵害があること
2. この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
3. 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと


アフター:自衛権発動の要件
1. 日本への武力攻撃や密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
2. 日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない
3. 必要最小限度の実力行使にとどまる

(略)
違いについて。
 1.については文言上、大きな差がある。
 しかし、前要件1.「急迫不正の侵害」と新要件における日本言及部分を抜き出した「日本への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」の関係は、前要件の文言をより解説的に展開したことであって、解釈上の大きな差はない
 1.の違いは、新要件で「密接な関係にある他国への武力攻撃」が加わったことだ。
 これが個別的自衛権から集団的自衛権への憲法解釈の変更と言われる理由である。

(急迫不正の侵害というのは、刑法で、正当防衛を認める要件)


佐藤優さんのラジオでの解説。いままでは個別的自衛権の延長でやっていた自衛隊の海外での活動が、閣議決定や安部首相の発言によってできなくなったということだそうです。
【佐藤優】集団的自衛権実は公明党の圧勝!そのワケは - YouTube
佐藤優くにまるジャパン7.4 集団的自衛権 逆に行使難しくなった - YouTube

[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39828:title=佐藤優集団的自衛権の行使は、閣議決定のところでいろいろな制限をつけたのでより難しくなりました」 佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol040 文化放送「くにまるジャパン」発言録より | 佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」 | 現代ビジネス [講談社]]





佐藤優さんは、公明新聞にも寄稿しています。

ほっとメール@ひたち : 公明党は、現実の中で「平和をどう担保するか」に取り組んだ!
 その意味で、個別的自衛権の枠を超えることが一切ないという枠組みを、安倍首相の「集団的自衛権という言葉を入れたい」というメンツを維持しながら実現したわけで、公明党としては、獲得すべきものは全部獲得したと、私は考えている。だから「公明党が苦しい言い訳をしている」などという指摘は、なぜ、そんな認識が出てくるのか不思議でならない。
 実際に、私が知る外務省関係者やOBの間では、「これでは米国の期待に応えられないのではないか」と、今回の閣議決定に対する評価は高くない。むしろ集団的自衛権の行使を熱望していた人たちの野望を、今回の閣議決定で抑こえ込んだ形になっているというのが現実である。


追記

佐藤優のインテリジェンス・レポート---「集団的自衛権に関する閣議決定と公明党」〜国連の集団安全保障措置による自衛隊の派遣が不可能になった〜
集団的自衛権に関するマスメディアの報道に、強い違和感を覚えます。今回の閣議決定を精読すれば、自衛隊を動かすことに対するハードルが以前よりも高くなっていることがわかります。

木村草太氏:国会質問で見えてきた集団的自衛権論争の核心部分 - YouTube
閣議決定で「集団的自衛権」と呼んでいるものは、実際は個別的自衛権と­集団的自衛権が重複する領域にある事象で、今回政府はそれを必死になって探し出し、そ­れを集めたものを無理矢理「集団的自衛権」と呼んでいるだけであって、実際はこれまで­の個別的自衛権の範囲を一切超えるものではないと木村氏は言うのだ。



そういえば、今回の3要件は公明党が作成して自民党に提示したという新聞記事が有りましたね。他の報道機関は裏付けがとれない(証言を得られない)ということで報道できなかったそうです。

自衛権行使「新3要件」公明が原案 自民案装い、落としどころ - 西日本新聞
だが、実はその原案は、公明党北側一雄副代表が内閣法制局に作らせ、高村氏に渡したものだった。解釈改憲に反対する公明党が、事実上、新3要件案の「下書き」を用意したのだ。


茨城県公明党の政治家といえば、井手よしひろ県議さんです。
どのような態度を取るのか興味津々でしたが、今回の閣議決定について肯定的に書かれています。党員だから仕方がないのかなと思っていたのですが、佐藤優さんの話を聞いてから考えると、安倍総理の勢いをうまく利用して大勝利を獲得したのかもしれないと思えてきました。
ほっとメール@ひたち : 集団的自衛権をめぐる閣議決定、憲法9条下で認められる自衛権の限界を示した
ほっとメール@ひたち : 納得出来ない「海外で武力行使可能に」との東京新聞一面見出し
井手 よしひろ - いつもながら良くまとまっています。 痒いところに、正に手が届く取りまとめです。


こんな新聞記事もありました。 
公明 地方の反対やむ
公明党の本部に騙されているのかもしれませんが、それだけでは無さそうな気がします。
(念のためですが、この記事は、自分の宗教観とか支持政党に基いて書いたわけでは有りません)





こんな解説も有ります。
集団的自衛権としては、相当に限定された範囲に過ぎないようです。

細谷雄一の研究室から:集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定 - livedoor Blog(ブログ)
やや長くなりましたが、今回の政府の決定は、与野党協議における公明党の強い要望をかなりのんで、相当程度に抑制的な内容となっており、本来の集団的自衛権の行使が想定する範囲の1割程度の範囲での行使容認にしか過ぎません。行使が可能だとしても、たとえば集団的自衛権が認められているNATO加盟国のベルギーや、ノルウェーなど、アメリカの戦争に参加して、戦争好きの国になったわけではありません。
(略)
これらをすべて無視して、今回の政府の抑制的な決定を見て、「これで立憲主義が死んだ」あるいは「これで日本は戦争のできる国になってしまう」」というのは、あまりにも短絡的ではないでしょうか。むしろ「死んだ」のは、現実の安全保障課題に真摯に向き合って、あるべき政策や法制度を考える姿勢や、苦しんでいる他国や、襲われ、レイプされ、助けを求める人々に手をさしのべるという当然ながらの国際社会における人道的な精神ではないでしょうか。他国を助けるな!自衛隊員以外の人命を救助するな!と高い声で叫ぶ姿は、みていてとても悲しくなります。

集団的自衛権に限定的なら賛成する人が少なくないのは、現状の自衛隊の活動の制限がきつすぎると感じている人も多いためでしょう。
PKO 派遣で武装できないとか、南スーダンで韓国軍に弾薬の提供をしたら非難されたり、邦人の救出のために自衛隊機を派遣できずトルコに運んでもらったなどなど。
もちろん、それらは集団的自衛権とは無関係なのですが、現状は変えなくてはいけないという意識が高まっているのだと思います。
そういう意識を上手に解消できないままだったから、真面目な議論をできず、質の悪い結果に結びついてしまったんじゃないでしょうかね。
また、自衛隊員(日本人)が死ぬこと、殺すことになるということを理由に集団的自衛権に反対するのは、あまりにも内向きすぎですよ。(個別的自衛権で命の遣り取りをするのは構わないの?)


それと、中国については、中国だって、いきなりミサイルを撃ちこんだり、上陸作戦を始めることは無いわけで、当面は日本を経済面での困窮化させようとするでしょう。
原発を止め、化石燃料への依存度を高め、燃料の輸入航路である南シナ海制海権を握り、中国国籍の持ち主を日本に送り込む(外国人研修生制度の拡大)。
意図的にやっているのか、たまたま、そうなったのか知りませんが、日本の安定性が損なわれつつ有ることは間違いないでしょう。
70年間、日本で戦争は無かったのだから現状で良いというのは、大事故は起きてないから原発は安全だと言っていたのと同じだと思う。



追記

森田実の言わねばならぬ

A君も含めて多くの人が、7月1日の閣議決定は「集団的自衛権の行使を容認したものだ」と思い込んでいます。これは問題です。
 たとえば、7月1日の閣議決定の全文を報道した『朝日新聞』(7月2日朝刊5面)の見出しは「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(全文)」と、わざわざ囲みをつけて「全文」を報道しました。これを見れば、読者は、7月1日の閣議決定のタイトルがこれだと思うでしょう。しかし、これは朝日新聞社の編集者が勝手に付けたものなのです。
 閣議決定のタイトルは次のようになっています。
 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について 2014年7月1日 国家安全保障会議決定 閣議決定」です。
(略)
 「集団的自衛権容認」論者は、専守防衛の基本方針を変更することを主張していました。しかし、7月1日の閣議決定により、専守防衛日本国憲法を守る方針は維持されることになりました。安倍首相ブレーンの集まりだった安保法制懇は敗北して去りました。公明党の平和の論理が勝利した結果、安保法制懇は消えたのです。「限定」の意味はきわめて大きいものなのです。