「健康的被害」、「心理的被害」

田坂広志さんのインタビュー記事です。良い記事だと思いましたのでリンクしてみました。

政府は、福島の人々の「心理的被害」を直視せよ ――「被曝された方々は、生涯、重荷を背負うのです」 ――田坂広志・元内閣官房参与多摩大学大学院教授インタビュー(上)|次世代に引き継ぐ大震災の教訓|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/16944
従って、いま、政治や行政の方々が深く理解するべきことは、周辺住民の方々が受ける被害やリスクには、「健康的被害」や「健康的リスク」だけでなく、「心理的被害」や「心理的リスク」があり、この「心理的被害」や「心理的リスク」もまた、周辺住民の方々にとっては、深刻な「現実」であり、これから永い年月にわたって周辺住民の方々を苦しめる「トラウマ」になっていくということなのです。

 繰り返しますが、政治や行政の方々は、間違っても、こうした「心理的被害」を、「無用の心配だ」「過剰な懸念だ」「煽られた不安だ」といった言葉によって軽視してはならないのです。


ただ、ここで念頭に置いているのは、東電事故原発に比較的近い地域のことだと思われます。
また、田坂広志さんのいう心理的被害というのは、健康的被害の少ない(無い)事を納得できても残ってしまう心理面での被害のことであって、根拠の薄い健康的被害を訴えることや、そこからくる不安を肯定しているわけでは無いでしょう。(軽視してはいけないとは言ってますが)


私も以前、関連しそうなことを書いていました。

思い返して笑える日は、多分、来ない 2011-07-16 - ひつじの日記 http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110716#p2
「あの時は色々、大変だったけど,何も無くてよかったね」と笑い合える日を迎えられるように、今、放射線対策を要求している方もいらっしゃるようです。
でも、残念ながら、そういう日が来ることは無いのではないでしょうか。(略)
誰かが発病したとき「原発事故がなければ病気にならなかったのに」という気持ちを拭い去ることは出来ないでしょう。


なお私は、つい先日の記事で「私の脳みそでは、保護者等の不安や、法令のことまで考えきれないので、最初から対象外」と書きましたが、「心理的被害」を無視するものではありません。
健康被害放射線対策や調査・検査によって低減できると過剰に期待しているうちは、心理的被害とか言う前の段階で止まっているわけですから、まずは健康的被害に注視する必要があるだろうということです。
また、この1年間を振りかえると、放射線による肉体的被害よりも、不適切な情報の拡散による被害のほうがはるかに多くなりそうに見えます。(10年後に振り返っても同じ感想を持ちそうに思います。確実なことは今は誰も言えませんが)


健康的被害の認識についての合意ができていれば、心理的被害のため(だけに)何らかの対策をすることを否定するつもりは有りません。しかし、合意のないままに対策をしてしまうのは、変な認識を強化したり、逆に健康的被害の可能性を増やしてしまうことを懸念しているだけです。


こんなことを考えていたら、守谷の考える会(の中のおひとり?)は、このように書かれていました。
妥当かどうかの判断は私には出来ませんが、十分に考え抜いておられることは分かります。東電事故原発の近隣住民も、多分、同様な心境なのだと思います。

保健福祉委員会での審査|子どもの未来を考える会 守谷 オフィシャルブログ http://ameblo.jp/future-children-moriya/entry-11190333890.html
私は感情的に健康調査を求めているのではなく、本心を申し上げますと、これまでの茨城県で測定された放射線量では、恐らく健康被害が起こる可能性は相当低いのではと考えています。(略)いくら除染をしても、いくら食品の安全基準を厳しくしても、結局は子ども達の健康調査を実施して科学的なデータを示さなければ保護者の安心や納得は得られないのではないでしょうか。

守谷の市民団体は、健康調査被曝量調査でサンプル調査を要望しているなど、他の団体とは考えかたやスタンスが少し違うみたいですね。

茨城子どもの健康調査を求める請願|子どもの未来を考える会 守谷 オフィシャルブログ http://ameblo.jp/future-children-moriya/entry-11184262690.html
茨城県内20市町村の子供達について、全身測定装置ホールボディーカウンターを使った内部被ばくサンプル検査を行うこと。