住民監査請求の結果に書かれている「理由」は適正なのか(1)

常総市オンブズマンさんによる、常総元気塾に関する住民監査請求の結果(平成24年2月8日)を読んでみました。
すると、住民監査請求として問題が有りそうな記述がありましたので、書いておきます。
少々、長くなってしまったので、いくつかに分けました。最初に、住民監査請求に必要な内容と、監査委員の役割という、一般論をまとめた記事をアップします。

住民監査請求に必要な内容

常総市オンブズマンさんの監査請求書(職員措置請求書)は細かく厳密に書かれているので、住民監査請求を裁判のように難しく感じてしまうことがあります。
しかし、住民監査請求を提起し、監査を求めるには「請求の要旨」と「事実証明書」があれば十分とされています。
そして、「請求の要旨」として記載する事項は、この程度とされています。

http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/3746.html
いつ
誰が(請求の対象とする職員)
どのような財務会計上の行為または怠る事実があるか
その行為または怠る事実は,どのような理由で違法・不当なのか
その結果どのような損害が市に生じているのか
どのような措置を請求するのか

また、「事実証明書」とは「違法または不当とする行為を証する書面」ということで、新聞記事や情報公開での文書程度で足ります。


要するに、住民側(請求人)が示すべき事項は、監査の対象となる客観的な疑いがあることと、それを「当該行為等を他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示」(最高裁平成2年6月5日判決)することだけです。
そのことは、総務省が作成した資料にもハッキリ書かれています。
(赤線部分を読んでください)
(行政救済制度検討チームWG(第5回)各府省提出資料(財務省,総務省平成23年9月 29ページ http://www.cao.go.jp/sasshin/shokuin/gyosei-kyusai/index.html#docu05 )
(なお、青線の部分について説明します。住民監査請求に関する情報を集めていると、資料が足らないなどの不可解な理由をつけて事務局が監査請求書自体を受け取らないといった事例を見かけます。しかし総務省は、そのような対応は間違っているとしているらしいと示すために青線を引いたものです)


監査委員の役割

裁判の場合は、言い分を互いに厳密に主張し、裁判官は主張のみから判決を下すのが基本のようですが、住民監査請求では、上記したように、そこまでは求められていません。
住民側の主張に足らない部分あるならば、監査請求をきっかけとして監査委員が主体的に調査・解明することを求められています。

関哲夫 住民訴訟論(行政救済制度検討チームWG(第5回)各府省提出資料(財務省,総務省)30ページ http://www.cao.go.jp/sasshin/shokuin/gyosei-kyusai/index.html#docu05 )

(追記)
住民監査請求について書かれていた本をたまたま見かけましたのでアップしておきます。「端緒の役割を果たすだけのもの」としており、きっかけを提示すれば十分という意味だと思われます。


(ここまで追記)



そもそも、監査委員は必要があると認めるときはいつでも監査をすることができる地方自治法第199条1項、2項、5項)のですし、自治体が補助金を与えている相手への監査もできます地方自治法第199条7項)。
このように、監査委員は自分の判断だけで、広範囲な監査を行う権限を持っているのですから、住民監査請求においても、住民の訴えの内容に縛られる必要も理由もありません。


地方自治法199条(監査委員の職務権限に関する基本規定)へのリンク
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/000/000455.html

H14. 3.25 秋田地裁 平成12(行ウ)3 怠る事実の違法確認請求事件 | 判例 検索 無料 士業 アントレプレナー支援サイト http://www.oft.co.jp/02-2/027514/h14-325-123.html
被告(秋田県)の主張
監査委員は,監査請求書において請求人が主張する違法理由に拘束されることなく,それ以外にも,監査委員自ら積極的に調査を行うことにより判明した事実や法的知識等から別個の違法理由が判明すれば,そのような違法理由も審査して,監査請求の判断を行わねばならない。

最高裁判例 昭和62年2月20日 http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/text-870220fusinsei-okotarujijitsu-saihan.htm
>住民が主張する事由以外の点にわたつて監査することができないとされているものではなく、

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