今後の常総市の放射線の犠牲者は何人か

数日にわたって書いてきた「今後の・・・」シリーズの最後になります。

  1. 外部被曝は年間1ミリシーベルト程度と推定(http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110714#p1
  2. 飲食物からの内部被曝も年間1ミリシーベルト程度に抑えられそう(http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110715#p1
  3. 呼吸による内部被曝は他の被曝に比べれば、ごくわずか(http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110716#p1
  4. 地表に沈着した放射線量は3年で半分に減衰する(http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110717#p1

この結果から、1年間の被曝量を2ミリシーベルト、今後の放射線量は飲食物を含め減衰していくとすると、10年間の累積被曝量は10ミリシーベルト程度になります。
30年の累積で17ミリシーベルト、50年で22ミリシーベルト、100年で27ミリシーベルト前後のようです。
(正確に計算したわけではなく、今年2ミリであれば、来年はその0.784倍の1.568ミリという被曝量を合計しただけですので、数学が好きな方は式を立てて推計してみてください)


過去の放射線被曝での健康被害に関する統計では、100ミリシーベルト以下の被曝では人体への影響はみられないようです。
そうであれば、10ミリシーベルト(10年累積。100年なら27ミリシーベルト)であるうえ、長期間にわたった低線量の被曝では、なおさら変化がおきない可能性が高そうです。
(累積20ミリシーベルト程度の原発作業員に健康被害が認められたという報告書があるそうですが、影響がみられないとする報告書も多数あるようですし、そもそも今回の事故後の対応をみると本当に累積20ミリシーベルト程度の作業員だったのかが疑問です)


しかしながら、100ミリシーベルトの被曝で0.5% の致死性のガンを発症するという統計があるのであれば、27ミリシーベルト(100年の累計)では0.135%の発症という計算も考えられないことは有りません。
常総市の人口は 64,888人だそうですので、電卓をたたけば数字は出てきます。
ただし、人体には修復機構などがあるため、長期にわたる累積被曝に対して100ミリでの数字を単純に用いるのは無理があるようです。
そのため計算した結果は、極端に過大な数字になっていると思われますが、最大でも犠牲者数はその位であることを知っておくことは無駄ではないでしょう。


ちなみに、内部被曝を含めて年間1ミリシーベルトであった場合の累積被曝量は、年間2ミリシーベルトの場合の半分になります(10年で5ミリシーベルト、30年で9ミリシーベルト、50年で11ミリシーベルト、100年で14ミリシーベルト。微妙に異なるのは数字の丸めの関係です)。 その場合の犠牲者数も電卓をたたけばすぐに数字は出てくると思います。
年間1ミリシーベルトを目標とし安心できる(問題ない)とするのは犠牲者数がその程度なら許容するということなのでしょう。それなのに累積被曝量に比べたらわずかでしかない、食品や土壌等からの一時の被曝を問題にするのは、バランスを欠いているように思います。


命と健康を守ろうとするとき、何にコスト(お金だけではなく、心の持ちよう等を含む)をついやすのが、最も有効で合理的なのかは、簡単に決められるものではありません。

追記7月20日

あぁ、こういうことなのか。そうだとすると安心してもらうのはかなり困難そうだ。そのために税金を使うのが正しいのかどうか。たとえ「放射能検査済み」って書いて有ったとしても、検出限界とかの話がでてきそうだし。

http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20090529/p1 「皆さんが食べているトマトには毒が入っています」 - 食品研究者の夜食日記
焼き肉のコゲを今の100倍ぐらい毎日食べても、発がんするかしないかのレベルですよと伝えたつもりですが、講義後に毎回書いてもらっている質問・コメント票には、「発がん物質→怖い」という脊髄反射的コメントがいくつかありました。
 毒性と量の関係の説明は、伝わらない人には本当に伝わりません。有害物質がほんのちょっとでも入っているとを聞くと、量のことは全く考えず拒絶する人が少なからずいます。

http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20101124/p1 理性や理屈だけでご飯が食べられるか? - 食品研究者の夜食日記
しかしその一方で、「リスクとベネフィットといった理性や理屈だけで、はたして飯が食えるか?」という疑問を持っています。
 例えば、トイレの床に落ちた物を拾って食べたいと思うでしょうか?
 衛生的に問題がなくても、私は食べるのに躊躇します。


全然、別の話ですけれど、ついでに。
健康診断で行うレントゲン検査の有用性を否定する見解が多数あるようです。少なくとも肺がんの発見には役立たないようです。
それなのに行われ続けているのは医療業界の商売のため(技師さんの雇用のため)とも言われています。
地域にもよっては放射能への対策をするより、レントゲン検査を中止したほうが、健康被害の防止には役立つのではないでしょうか。
胸部レントゲンはおよそ0.05mSvの被曝だそうですので、50回(50年)だと2.5ミリシーベルトです。
放射能への対策をしたところで減らせる被曝量は微々たる物と思われるので、他の方法で健康被害を減らすことを考えたほうが、助かる命は増えそうです。

追記7月21日

ICRP 勧告では、特別な事情においては5年間を平均することを許容するとのことです。
常総市においては、5年で7ミリシーベルト弱になりますから、ちょっと超えてしまいます。
しかし、計算の元に使った放射線量は、最も高かった学校の地点ですので、他の多くの地域では、なんとか収まるのではないでしょうか。
放射線量の高い地域で限度に近づけるのであれば、周囲の除染や、日常の居場所、食品への配慮などが必要そうですね。

「計画被ばく状況における公衆被ばくに対しては、限度は実効線量で年1mSvとして表されるべきであると委員会は引き続き勧告する。しかし、ある特別な事情においては、定められた5年間にわたる平均が年1mSvを超えないという条件付で、年間の実効線量としてより高い値も許容される。」
『国際放射線防護委員会の2007年勧告』(p60,日本アイソトープ協会、2009)

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