武田教授。それを話のマクラにするのは、いかがなものでしょう

教授の場合は「わかってて書いている」場合があるそうなので、あんまりチャチャを入れるのも野暮かなとは思いますが、気の付いたことを一応、残しておきます。

その1

http://takedanet.com/2011/05/post_675c.html 武田邦彦 (中部大学): 短い情報・・・杉並の放射線平成23年5月30日 午前10時 執筆)
メールを読んでいましたら、読者の方から杉並の測定値が送られて来ました。
この記録は外ですが、外(空間)は0.1マイクロ(毎時)で、おおよそ1年1ミリシーベルトを下回るぐらいです。安心です。
これに対して、ビルの屋上は6マイクロ(毎時、これは1年に53ミリにあたる)もあったようです。健康に注意するという条件での上限が1時間0.6マイクロですから、その10倍もあります。
お子さんをビルの屋上など、3月に降ってきたままになっているようなところは避けましょう。
困ったことですが、理屈通りではあります。
(注 ブログには、0.107μSv/hと、6.390μSv/hを表示した、ガイガーカウンターの“表示部”のみの画像あり)

地表面とはいえ都内で 6.390μSv/h は大問題なので、グーグル様のリアルタイム検索に「杉並 6.390」でお伺いを立ててみました。
すると、4月12日ごろからのツイッターYouTube の動画を話題にしていることが分かりました。
残念ながら、その際にリンクされていた動画(4/7 屋上の放射線http://www.youtube.com/watch?v=AUMib19gT_Y )はユーザー自身で削除したようですが、この動画と同じもののようです。
武田教授のブログにある写真と同じシーンがあるので間違いないでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=8rGiHdmsfUI YouTube - 【福島原発】東京都杉並区の屋上に死の灰が溜まってる??


さて、動画を見てすぐにわかることは、使用しているガイガーカウンターベータ線も感知してしまう機種ということです。(インスペクタープラス inspector)
ベータ線は空気中でもあまり飛びません。したがって地表から放出されるベータ線は、1メートル程度の高さで測定したときには感知しにくいものの、地面に置くとまともに感知してしまうために異常に高い数字を表示してしまいます。
したがって床面に置いたときの数字は大気線量を表していないうえ、1メートルの高さで計ったときの数字とを比較することはできません。


もちろん、それを知った上でなら数字を有効に使うことも出来ます。でも、単純に「6.390」という数字を大気線量であるかのように扱うのは、あまりにも不見識でしょう。
そもそも1ヶ月以上も前の動画を注釈なしで使うというのも、どうかと思います。

その2

さらに、2週間ほど前にはこんな記事もありました。

http://takedanet.com/2011/05/110515_1ff0.html 武田邦彦 (中部大学): 科学者の日記110515 「奴(やつ)」はどこにいるか?(平成23年5月15日 午前7時 執筆)
地上1メートルのところ。おおよそ2.7マイクロだ。(略)
測定者が装置を道路の上に置くと、20マイクロ(19.9)になった。
「奴」は地表にいたのだ!!(略)
この例では、地表に対して1メートルのところが7.4分の1になっている。
放射線が出ているところが点(点線源)ならが「距離の二乗に反比例」して下がるけれど、全体が汚れているところが全体の場合、直線の線源と見なすのが適当だから「距離の1乗に反比例」になるだろう。

距離の1乗に反比例ということで計算すると“地表”は13.5センチになってしまうと思うのですが(自信なし)。
それに平面に均一な放射線源があると仮定できるのに、なんで「直線の線源」として考えたのでしょうか。
おそらく、電磁気学ガウスの法則?)では、電荷が平面に一様に分布している時の電場の大きさは、高さに関係なく一定のため、動画の現象の説明できず、“それらしく”説明しようとしたのではないでしょうか。(そして失敗している)
余計なことは書かなければ良かったんじゃないかと思うのですけれど、何かを言わずにはいられない性分なのでしょうか。
なお、放射線量の高さによる変化を計算しておられるサイトを見ると、電磁気学の計算式とは全く異なる計算が必要なようです。(理解できていませんが、こちらなど。http://d.hatena.ne.jp/ita/20110418/p1

自治体の多くは地上15メートルのところで測っている.)
そうなると、この場合、自治体から報告される空気中の放射線量は1時間0.5マイクロ(略)ということになる。

1メートル2.7マイクロのとき、「距離の1乗に反比例」すると仮定して計算して、15メートルで0.5マイクロというのは、どういう計算なんでしょう。5メートルと間違えたのでしょうか。

なお、普通なら測定したご本人にご了解を得た後にブログに掲載するのですが、現在は多くの方の健康に直接関係があるのでユーチューブをそのまま切り取って利用させてもらいました。

いや、「普通なら」了解は不要ですが、リンクを張っておくものです。
探してみたところ、動画は、こちらのようです。
http://www.youtube.com/watch?v=geD1ulzYQSI&feature=mfu_in_order&list=UL YouTube - 福島市で表土除去の効果を実験no.1
それをみると、動画の中に下記の注意が、ずっと表示されています。

【注意】この計測条件でマイクロシーベルト表示をしてしまうと、放射線量の正確な数値を表せていませんでした。単位を忘れて数値の減り具合で効果を把握してください。

もしかすると教授が閲覧したときには注意書きが無かったのかもしれませんが、この動画は2011/04/27 にアップロードされてます。
「分かってて書いている」と言われてもしょうがないんじゃないでしょうか。


ご本人も正確性が無いことは自覚されているようですが、それと「分かってて書く」のとは意味が違います。

http://takedanet.com/2011/04/post_4959.html 武田邦彦 (中部大学): 原発連休明けの生活(1) 原発のこれまで
私は家庭のお父さんとして、「あまり厳密ではなく、慌てん坊で抜けているところがあるけれど、家族の安全を第一に考える愛情には自信がある」

http://twitter.com/#!/chemy/status/68974123560353792 @NATROM さん
週刊SPA!「エッジな人々」武田邦彦氏。正確さよりわかりやすさが大事で、お父さんが少々いい加減なことを言ってもいいとの主張。(略)

ちなみに孫正義社長は純粋に分かっておられないよう

執筆中にたまたま見かけました。

http://lockerz.com/s/105873620 Lockerz.com
.:. 孫正義's Photos - 福島県庁前の雑草での計測値は10倍。長期間福島に暮す住民の避難基準はγ線の計量のみで良い?体内被曝を考慮してβ線α線の合計値を基準に判断すべきなのでは?写真右端だと政府方式(γ線のみ)の10倍。

知識のある方が見るとこんな感想。

http://twitter.com/#!/Mihoko_Nojiri/status/75130015150391296 Twitter / @野尻美保子(ネコさん): なんで孫さんっていつまでたっても同じこといっているの ...
http://twitter.com/#!/Mihoko_Nojiri/status/75130169853091840 Twitter / @野尻美保子(ネコさん): 勉強するかなんかすればいいのに。本人が忙しいなら、スタッフつければいいのに。

何で駄目かというと、こういうことだそうです(2週間前にツイートされていたものです)。

http://twitter.com/#!/hayano/status/69793088603828224 Twitter / @ryugo hayano: ガイガーカウンターの窓にベータ線が入った時はあまり数え落とさない.ガンマ線はほとんど通りぬけ,検出されるのは1%以下程度.ガイガーカウンターガンマ線で校正)にベータ線が入ると「すごく高い線量だ」と装置が誤解する.この時のマイクロSv/hの読みは校正想定外だからデタラメ

こんなのにも気が付いたので

http://takedanet.com/2011/05/post_4a28.html 武田邦彦 (中部大学): 幼稚園の砂場と園庭 ・・・ あるお母さんから(平成23年5月28日 午前9時 執筆)
お子さんが通っている幼稚園の砂場と園庭の土を、ご自分がお金を払って検査したお母さんがおられます.
場所はさいたま市、結果は次の通りです(1キログラムあたり).
ヨウ素-131 109ベクレル
セシウム-134 412ベクレル
セシウム-137 432ベクレル
(略)
次に土はもともと比重が2.2ぐらいですが、空間もあるので、見かけ比重が1.0とすると、1キログラムの土を3.3センチの深さでとったら、
(略)
幼児の健康のことを考えると、表土を少し削った方が安全

お母さんは「砂場の砂」と「園庭の土」を測定に出したようですが、ブログに書かれている測定結果は1種類のみです。
どちらなのか書かれていないのですが、その後の計算は「土」を前提にされています。
しかしながら、読み進めると

もし、この値が2倍だったら、砂場は「標識で囲わなければならない」という場所だったのですから、

となっていて、急に砂場になってしまってます。単純に間違えただけなのでしょうか。


このような土壌の分析結果で、ヨウ素も測定しているものは少ないようです。
(国などが行っている土壌調査は、セシウムだけで、ヨウ素の測定はしていない)
したがって、この調査結果は貴重なものなので、測定日や調査方法(検体の量など)も明記しておいてくれれば、他の人の分析のに役立つと思うのですが、なんでこう、いつもいつもデータの引用元を明確に示さないのでしょうか。

(6月1日追記)一番大事なことを書くのを忘れてました

ブログの記事では、計算した結果から「基準に対してギリギリ、セーフ」としています。
しかし、それは採取した土(砂)が3センチ(3.3センチ)と仮定した結果です。
普通の人は採取する深さが重要とは考えないでしょうから、ふつうにシャベルで掘って採取した可能性もあります。
もし、平均して5センチの深さの土だったとしたら、4.765Bq/cm2 となり基準値を超えてしまいます。
3センチという“仮定した数字”による結果であることは、もっと分かりやすく明確に書くべきではないかと思います。
同じことを原発推進側の学者がやったら、大反発されると思うのですが。

おわりに

武田邦彦教授のブログは、とても参考になることや、考えるヒントを提供していただけることもあります。しかしながら、上記のような妙な話も少なからず有ります。
このように書かれている方もいらっしゃいます。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110318#p1 武田邦彦氏の功罪 - NATROMの日記
武田邦彦氏の発信している情報は玉石混交である。正しいこと、参考になることも書いているが、明らかに誤っていることも書いてある。情報の可否を判断できない人は武田邦彦氏の主張を信用しないほうがいいと私は考える


2ちゃんねるの開設者であるひろゆきさんは、「嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」と言われたそうです。
そういうことなのでしょう。

追記 7月12日

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110712#p1 武田邦彦氏の誠実さ - NATROMの日記
武田氏にとっては、ブログの内容を検証しようとするような人は、想定読者の対象外なのではなかろうか。武田氏の想定読者は、自分の書くことを鵜呑みにしてくれる人、事実かどうかよりも「御用学者」の間違いの指摘を期待している人であるのだろうか。

なるほど。私は対象としている読者じゃないということですね。