武田邦彦教授は固定測定局を地面に埋めるよう訴えているの?

武田教授について書くのも、今更な気がするのですが、これはちょっとなぁ、ということで書いておきます。

http://takedanet.com/2011/05/110523_a0af-1.html 武田邦彦 (中部大学): 科学者の日記110523 ああ、すれ違い! (平成23年5月23日 午前8時 執筆)
あるお母さんが、子供の被曝が心配になって、市が測定している「空間の放射線量」を調べた。
なんと、地上5メートルのところで測っているではないか!
そこで、早速、市に電話をして「子供の被曝が心配なので、地上0.5メートルで測ってくれませんか」と御願いしました。
その答え。
「県衛生研究所内のモニタリングポストは、文部科学省からの委託事業として、空間放射線量率の測定を行うために設置しております。(略)」
一言で言えば、「バカだねえ」ということになるし、もう少し突っ込めば、「あなた、誰から税金をもらって生活しているの?」と言いたくなります.
お母さんが頼んだのは、「文科省の委託事業」のことではなく、「非常時だから、せっかく装置があるのなら、文科省と掛け合って地面付近の放射線量を測って欲しい」と言っているのです.
(略)
神奈川県がもらったお金は税金です.この非常時に「学問的な目的で設置した装置を、県民の健康を守るために使わせてくれ」と国と折衝したかを、まず答えなければならないでしょう。
(略)
神奈川県は自分たちが税金で生活していること、県民を守る立場にあることに気がつき、地表0.5メートルで測ってください。


とりあえず、文中のキーワードで検索してみました。
「県衛生研究所」「神奈川県」で検索してみると、こちらの組織のようです。
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/ 神奈川県衛生研所トップページ

そしてこちらにある Q&Aの最後の質問によると、5メートルで測定しているのは茅ヶ崎市にある測定局のようです。

空間放射線量に関するQ&A- 神奈川県防災・災害情報
Q 県で設置しているモニタリングポストの検出器の地上からの高さはどのくらいですか。
川崎市内及び横須賀市内のモニタリングポストは、地面から約3メートル、茅ヶ崎は約5メートルの高さで測定しています。(略)
なお、モニタリングポストが設置されていない足柄上、県西、県央地域では、可搬型のサーベイメータにより地上1メートルで計測しています。


衛生研究所は茅ヶ崎市にあるので、この画像のモニタリングポストなのでしょう。
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/008_topics/files/topics_110513.htm 神奈川県衛生研究所/飲用水の安全性とは?
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/070223_news118.html 神奈川県衛生研究所/衛研ニュースNo.118


文部科学省と掛け合えば、この測定器で50センチのところを測定できるようになるのでしょうか。


武田教授は持ち運びできるような測定器で、5メートルの高さで測定していると思い込んだのでしょう。
しかし武田教授は原子力(燃料?)の専門家として委員をされていたそうです。
それであれば、5メートルという数字を聞けば、固定局の可能性があることは思いつくのではないでしょうか。
自分でもグーグル検索で上記のサイトを数十秒で見つけられたのです。


自治体に対して憤慨する前に、ちょっと考えるなり、調べてみるという気持ちは無かったのでしょうか。


そもそも、今まで5メートルの高さで計測していたのであれば、それはそれでデータの継続性という点で重要な価値があるわけで、それを50センチにしろというのは、科学者としていかがなものかと思います。
茅ヶ崎市は測定器を購入し、50センチで測定せよ」とか「衛生研究所にはサーベイメータがあるのだから、県内各地で50センチで測定せよ」というのなら分かりますが、そういう方面は全く考えなかったようです。


また、お母さんは「市」に電話しているですから、市の担当者が答えたのでしょうに、なんで「県」に対して文句を言っているのでしょう。


ま、教授の場合は「わかってて書いている」場合があるそうなので、あんまりチャチャを入れるのも野暮だなとは思います。
しかしながら、このブログを見た人には、自分でちょっと調べて考えるみることもせず、自治体や国に対して憤慨されている方も少なくないようなので、それは困ったことだなぁということで書いてみました。


別件ですが、この書き方は、どうかと思う

http://takedanet.com/2011/05/post_ab4a.html 武田邦彦 (中部大学): 国を失った日本人(1) 海の汚染、はじまったか?(平成23年5月26日 午前9時 執筆)
ある出版社が、「外国」の環境団体が測定したデータを送ってくれました。
(略)
今回は、データ自身のつじつまは合っていますが、外国の環境団体のもので、信頼性がまだ十分ではないこと、

これは、グリーンピースの調査結果のことと思われます。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2802673/7266495 魚貝類、海草に基準値超す放射性物質 グリーンピース 写真4枚 国際ニュース : AFPBB News


なんで教授は、いつもいつもデータの引用元を書かないのでしょうか。
記者発表(26日の12時ごろ)の前に執筆したからというのが理由のひとつなのでしょうが、それなら記者会見後にアップしても問題は無いでしょう。
データに限らず引用元を明記するというのが、科学でもブログでも最低のマナーかと思うのですが。


それに、グリーンピースの信頼性が不十分というのも気になります。
グリーンピースは日本では評判が悪いようですが、国際的にはその調査・研究は信頼をえているようです。(思想的な面では批判も有るのかもしれませんが)
「外国の環境保護団体」について、ちょっと調べたり考えたりせず、レッテルで判断されているのではないでしょうか。


せっかくなので、グリーンピースのページへのリンクを張っておきます。
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/34986 海洋放射能汚染に関する調査結果を発表 政府にたいして調査の強化や水産関係者への補償を要請 | 国際環境保護NGOグリーンピース