削除要請への返答文例(4)名前を書いた看板の設置

ここからは事実に関する個別の返答になります。個々の具体的な話なので一般化はできませんが、公職選挙法で看板や寄付をどのように規制しているのかを少しでも知ってもらえれば良いかなと思います。


申立書では、政治家の名前を書いた看板の設置場所について、事務所に隣接する土地に設置し、事務所の案内をしているので違法ではないとしています。
しかし、法令には、看板の設置場所は「事務所ごとに、その場所において」と書いてあるので、隣接した土地では合法とは言い切れないことなどを返答しました。

○○○○氏の行為は違法行為に該当するか

「看板」「祭りへの寄付」「政務活動費の後援会への寄付」の3つに分けて以下に記述する。
申立の内容を加味しても、違法もしくは不当な行為であったとの当方の認識には変わりはない。

◆看板について
記事の内容は事実であるとの認識に変わりはない。


当該ブログ記事中にも引用しているが、各地の選管は、看板の『掲示できる場所(公選法第143条第16項第1号)』についての法令の規定『その場所において』で、『事務所がある場所』との旨を示している。つまり、看板を設置する場所として選管に届け出る土地は事務所の所在地と同一場所でなければならない。しかし本件では届け出と事務所の所在地が異なることは、申立者が『隣接する土地』と認めているとおりである。


(略 極めて個別な話のため)


申立者は看板は「現実に存在する事務所の案内」の役目をしていたと述べている。しかし、看板の立地点に立って見回して、もっとも目に入る不動産は○(公的施設)である。看板の周囲の約20〜30メートルには事務所や個人宅、商店のような建物は見当たらないうえ、看板の設置地点をとおる路地も無い。よって申立者の言う「現実に存在する事務所の案内」の役目をしていない。


申立では、この看板の証票を平成○年○月○日付で受け取ったとしている。その頃の現地の画像では、看板の近くには小屋および2階建ての家屋があることから、証票はそこを事務所として発行されたと解釈できる。しかし、現時点ではブログの写真でも確認できるようにその小屋および2階建ての家屋は存在しないのであるから、合法に設置されているとは言えない。


もし、上記の小屋とは異なる建物を事務所として証票を発行していたとしても、選管が充分に現地を確認していなかったことを示すだけで、違法性は否定できない。


なお、申立者は証票の根拠となる法律を「公職選挙法施行令第11条の5 第4項」としているが、第110条の誤りである。


参考

政治活動用事務所に掲示する立札及び看板について | 高島市
5 立札・看板を設置することができる場所について
 立札・看板は「政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において」掲示しなければなりません。(公選法第143条第16項)したがって、看板・立札は政治活動に携わっている人がいる建物のそばにその建物が政治活動用の事務所であることと示すことを目的として設置しなければなりません。このため、以下のような場所に設置することはできませんのでご注意ください。
 ・政治活動用事務所から相当離れている場所
 ・事務所の実態のない建物
 ・事務所の存在しない駐車場
 ・田畑、農道等の事務所が存在しない場所

公職選挙法 公選法第143条第16項第1号

16  公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この項において「公職の候補者等」という。)の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画及び第百九十九条の五第一項に規定する後援団体(以下この項において「後援団体」という。)の政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する文書図画で、次に掲げるもの以外のものを掲示する行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす。
一  立札及び看板の類で、公職の候補者等一人につき又は同一の公職の候補者等に係る後援団体のすべてを通じて政令で定める総数の範囲内で、かつ、当該公職の候補者等又は当該後援団体が政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において通じて二を限り、掲示されるもの

閉鎖されたブログにあった大阪府選挙管理委員会の回答では、「(看板は)政治活動のために使用する事務所の場所において掲示しなければならないため、一般的には、事務所の建物や事務所の同一敷地内にある構造物等に掲示しているものと考えられます」となっていたそうです。
(ここで言っている同一敷地内にある構造物等というのは、塀や門、小屋などのことと思います。また構造物等に掲示としているので、看板だけで自立して設置するのも法の主旨に沿わないと考えているようです)



政治家の名前のある看板(表示物)に関わる法律は、以下の様な主旨で作られていると私は想像しています。

  • 大原則として、政治家等の名前の入った表示物(文書図画)は大きさや形態に関わらず一切、設置できない。
  • しかしそれでは事務所の表札すら設置できなくなり一般常識に反するし、有権者にとっても政治家との対話がしにくくなるなどの不都合が発生する
  • だから、事務所の建物を明示して特定できる表示物(看板)ならば、制限つきで認める

看板は名前を売るために設置できると解釈している政治家も居るみたいですが、考え方が逆でしょう。
自宅の表札を、そんなところに設置するかどうかですね。